藤原宮跡北側の桜の草地での出会い






お写真に写られている方が、この日初めてお会いした西嶋さんです。
ご本人にお断りをして、写真を使わせていただきました。
まず、西嶋さんとの出会いのお話をする前に、我が家にいる犬のお話をさせてください。
我が家には、「こはる」という名前の黒柴の男の子がいます。
「こはる」と聞くと、女の子らしい名前と思われるかもしれません。
やさしいワンちゃんに育ってほしいと、やさしそうな名前を探していた時、主人が「こはるどう?」と言いました。それから何度も「こはる」と呼び続けたので、いつの間にか、その名前に決まりました。
私は「こはる君」といつも呼んでいます。
中型犬以上の犬を飼っている方には、あるあるかもしれませんが、朝晩の散歩は必須です。
けれどまだ残暑の時期。朝も8時を回ってからしか散歩に行けない日は、太陽に焼かれたアスファルトの上を歩くのも、こはる君には危険な暑さだと心配になります。
そこで最近になって、車で10分少々走り、藤原宮跡へ散歩に行く時があります。
幾度か通うようになった、ある朝のことです。
藤原宮跡の北側、道路を渡った先にある醍醐池。その西側の、桜並木のある草地で作業をされている男性がおられました。
とても気さくにご挨拶をしてくださり、私もご挨拶をすると、何気ない会話が始まりました。
出会いとは面白いもので、一期一会の出会いで終わることも多いのですが、この日は違いました。
20分ほどお話ししたでしょうか。お話を伺う中で、藤原宮跡の維持管理をしてくださっている方々の中のお一人なのだということが分かりました。
このことをコラムに書きたいと思い、お写真を撮らせていただき、お名前も伺いました。掲載についても、気持ちよく「良いですよ」と言ってくださいました。
私が本当に頭が下がり、そして反省したことがあります。
それは、藤原宮跡を維持するために絶え間ない作業があるという、その当たり前のことに、私自身が無関心で、気付いていなかったということです。
- 草を日々刈る
- コスモスの種をまく
- 菜の花の種をまく
- 花の時期が終われば、また次の花の準備をする
- 桜の木を手入れする
など、ほかにも数えきれないほどの仕事があります。
机の上だけではできないこと。AIにもできないこと。
西嶋さんのような方々が、日々こつこつと作業を続け、地域の方々と関わりながら、この場所を守ってこられたのだと思います。
今回の世界遺産登録へ至るまでにも、そのような縁の下の力持ちの方々が、大きな役割を担ってこられたのではないでしょうか。
そしてこれからも、私たちはそのような方々に支えていただくのだと、あらためて心に深く留めました。
西嶋さんは、こう話してくださいました。
「近所の校区の小学生の子どもさんが、コスモスの種を植えたんだよ。でもね、今年は雨が少なくて、多くがだめになってしまった。だけど、子どもたちには、そのようにうまくいかないことも学んでほしい」
そして、こう続けられました。
「現場で、体で直接感じることはとても大切で、例えば漢字で『痛い』と書いてあっても、実際にそれは、切って痛いのか、突いて痛いのか、打って痛いのか……いろいろな痛みがあることを学んでもらいたいのだけれど、市役所とのやりとりや、いろいろな制限があって、簡単に子どもたちにいろいろな体験をしてもらう機会が作れない。それに、校区が変われば、こんなに近くでも、もっと手続きが大変になる。それはもったいないことだから、僕は時間があるから、こうしていろんな人たちと話しては、市役所に行って意見や案を伝えているんだけれどね(笑)」
西嶋さんは、あと数年で80歳を迎えられるそうです。
「いつまでできるかな……。若い人たちに継承していってもらえたらうれしいけれど、働いていたりで忙しいから、土日であればと言ってくれる人たちもいるんだけれど、雑草はね、1日1センチ伸びるんですよ。体が続く限りは、私もね、やろうと思っています」
そう聞かせてくださいました。
私は、同じ人として、地元の住民として思いました。
地区や地域に関係なく、世界遺産を大切に思う人が、思うだけではなく、何か行動すること。作業をすること。声を掛け合うこと。
営利だけを目的としない人と人との輪が広がることが、世界遺産の維持には必要なのだと思います。そして、そのような人のつながりもまた、世界遺産の価値の一つなのだろうと感じました。
こはる君がつないでくれた、素敵なご縁のお話です。
最後に西嶋さんは、「そうそう、これは伝えておこう!」と、マルシェのことも教えてくださいました。
西嶋さんによると、2026年10月17日と18日には「コスモスマルシェ」が開催されるそうです。
そういえば昨年も、私はマルシェを遠目に見た記憶があります。
キッチンカーなどが並び、おいしいものが集まる様子を想像するだけで、ワクワクします。
世界遺産に登録されて最初のマルシェになるのではないでしょうか。
私も今年は、行きたいと思います。
✿✿✿ 空間 × 人 × 色 ✿✿✿
奈良県橿原市を拠点に、住まい・店舗のインテリア相談、家づくりの相談、図面作成を行う「樹樹サポート」です。インテリアコーディネーターとして、暮らしや想いに合う空間づくりをご提案します。
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